二日目の決めごと

ラマダーン月が始まって二日目。

この日の夜は、ある人物を訪ねるのが自分の中の決めごとになっている。

彼は私がドーハへ来るきっかけをくれた人。16年前当時の大臣。

今は現役を退き、のんびりと人生を送っている。

彼のような社会的地位の高いカタル人の家(というよりは屋敷か)には、毎年ラマダーン月になると礼拝の後に施しを期待して大勢の出稼ぎ労働者たちが集まってくる。いくら太っ腹な大臣級の人であっても、全員に手渡すことなど出来ないし、ここ昨今の不景気も相まって、正門前で使用人たちが彼等を追い返す光景があちこちで見られる。

そんな人混みの中をかき分けるようにして、顔馴染みの使用人の手引きで中へと入る。

マジリスには当の本人と兄弟や息子、そして職場の関係者が座っていることが多い。

現役の重役だけでなく、既に引退した人たちの姿も見えるのは、彼の人徳を表しているように思う。

そんな中に私のような一般職員が入っていくのは正直言って勇気がいる。いくらその場にいる殆どがお互いに知っている間柄だとて、自分がそこにいること自体が場違いな気分になるからだ。

それでも、思い切って挨拶すれば緊張も一気に解ける。

大臣とは特に会話はない。彼は客の相手に忙しいし、世間話をするにしてもお互いに暮らす世界が違いすぎて、共通の話題もない。

10分ほどそこに座り、紅茶を飲んでしばらくしたら退席する。

年に一度しか会うことはないけれど、それでも彼や彼の部族とつながっていることを確認できたなら、それで十分。

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