施し

最終更新日

タイ深南部の村では、家族の誰かが援助を必要とする事態に出くわすと、隣近所や親類を家に招くことがあります。招かれた先では簡素な食事が提供され、参加者は幾ばくかの寄付をします。額は一人当たり大体200バーツ(約700円)が相場。

今日もどこかの村のそんな食事会に誘われたとかで妻と義妹そして義父母を乗せて出かけることになりました。

今日の招集理由は「息子が交通事故に遭い、手術や入院の費用が要る」というもの。義母方の遠縁の人だとかで、妻もこの村に来るのは十数年ぶりだと言います。

会場は家の前の庭に運動会のようなテント屋根を張った一角。中に入ると男女別に分かれて座ります。義父が隣にいるので心強いものの、私はマレー語がからっきしなので、いつもこういう席では落ち着きません。

今日は幸いサウジ出稼ぎ経験のある年配者が複数いて声を掛けてくれました。やはりアラビア語で話している方が楽ですね。村の集まりなどでは出席者の中に必ず一人はアラビア語話者がいます。彼らは宗教系学問を修めるために昔昔にアラブ諸国に渡った人たち。帰国してからは村で宗教学校を開いている人が多いようです。

そのうちの一人、白い髭を蓄えた恰幅の良いおじさんは、タバコに火をつけスパスパと吸いながらサウジにいた頃の話をしたり、私がカタールでどう暮らしているのかを尋ねたりしていました。留学経験者には、たまにこういうチョイ悪オヤジ風もいて、何故か気に入られたりするのが毎度のパターン。

食事は定番のカノムチーンという「素麺のような米粉麺に魚のすり身カレーを掛けて」食べる料理でした。

一杯だけ頂き、帰り際に家の主人か奥さんに寄付を手渡してその場を後にします。

この食事会、施す方にプレッシャーを与えず、施しを請う側も惨めな思いをせずに済む。村人たちの知恵の一つと言えるでしょう。

福嶋タケシ