片足の男

最終更新日

ある日の午後のこと。

いつものようにマジリスで昼食をとり、食後のデザートを食べながらのんびりとしていたら、一人のパキスタン人が入ってきました。

両手に杖を突き、やや年老いて見えるその男。明らかにこのマジリスとは縁がなさそうな風体の彼には、右足がありません。

挨拶を一言述べてから、ゆっくりと端の席に座った彼が、一体何のためにこの場に現れたかは明白。しかし、その場にいた誰も、そして件の男も一声も発することなくじっとしています。

数分後、他の客が食事を終えて一人一人と帰っていく中で、彼もまた諦めたような表情で席を立ち上がりました。その時、このマジリスの主人の息子、つまり私の友達がそっと手招きをして彼を外へ誘います。

彼が来た理由はお金です。つまりは物乞い。たとえ相手が物乞いであっても、他人の目のあるところで施しは手渡さない。それがマナー。受け取る側にも人としての尊厳があるのです。

例えば道端で清掃に従事する出稼ぎに施すわずかなお金であっても、ローカルたちは握手するようにして渡します。

求める者と与える者。多くの人たちが持つであろう ”施し” に対する考え方。

本当はそうではありません。そこには持たざる者と持つ者がいるだけ。持つ者は、その手に余るモノを手放す機会を与えられたと考えるのです。

福嶋タケシ

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