果報は寝て待ってもやって来ない

投稿者: | 16/05/2019

トヨタが「終身雇用」を諦めてくれた方が日本の労働者の賃金は上がる
(DIAMOND online)

 豊田章男・トヨタ自動車社長の発言が物議をかもしている。曰く、「終身雇用を守っていくというのは難しい局面に入ってきた」というものだが、そんなものはとっくの昔に崩壊している。企業が正社員を減らし、派遣社員を使うようになった頃から、既に終身雇用など夢物語なのに、それを見て見ぬふりをして過ごしてきただけだ。

 ところで、この記事の趣旨である「賃金が上がる」の根拠は、

 では、日本人を低賃金でもニコニコさせてきた、この「保障」がなくなったらどうなるか?将来が不安だから、もっと給料を上げろという怒りの声が持ち上がるのは当然だ。優秀な人はどんどん条件のいい会社へ移ってしまうので、企業側も賃上げせざるを得なくなるのだ。

 ということなのだが、これに該当するのは労働者の数%に過ぎない。こういった記事を読んで「うんうん、そうだそうだ」と頷いている人たちの殆どが、自分たちもその数%に含まれると妄想しているようだが、現実はそう甘くはない。
 これからは「能力の高い人はより高い賃金を、そうでない人は更に低く」という時代に突っ込んでいくのだ。

 50代まで1つの会社に勤め上げる日本人は大企業などのほんの一握りで、大多数は他の先進国の労働者と同様に、「定年まで雇ってくれる会社」という理想郷を追い求めながら、自助努力で転職を重ねているのが現実なのだ。つまり、9割近い日本人がもてはやす「終身雇用」だが、実は大多数の人は享受することはない制度であって、スローガンのようなものなのだ。

 一方で記事では「終身雇用は単なるスローガン」だと指摘する。
 つまり、もう何十年も前から日本の労働人口の半数以上が何らかの形で転職ないしは労働市場からの撤退をしているというのだ。最初に入った会社で定年まで勤めあげるのはほんの一握り。であるならば、終身雇用が崩壊した後であっても、賃金上昇などの恩恵に預かれるのはその「ほんの一握り」の人間なのでは?と思ってしまうが、元より自助努力を怠らない、すなわち高度人材と呼ばれるような人ほど、より良い待遇を求めて転職を繰り返すことが多く、むしろ「ほんの一握り」の範疇にいた人ほど、終身雇用撤廃の負の余波に曝されるのではないだろうか。

 そういう意味では、この記事にある通り誰にとっても「チャンス」と捉えることはできるだろう。しかし、そのチャンスを活かすために必要な努力とエネルギーは想像以上。努力を怠ったがゆえに更なる降下を味わう可能性も大いにある。

 この記事のタイトル正確に記すならば、「トヨタが「終身雇用」を諦めてくれた方が日本の労働者の賃金は上がる可能性が高まる」といったところか。

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