マジリスという空間

投稿者: | 20/11/2019

在留邦人に会うと必ずと言っていいほど耳にするのが、

どうすればローカル(カタール人)と知り合いになれるのか?

という疑問です。

純粋に日系企業の駐在員、あるいは現地企業の協業組織、いずれにしても社内にいるのは日本人もしくは非アラブ系外国人。取引先の企業や官庁に出向いても、打ち合わせに出てくるのはアラブ系外国人。

モールスークに行けば、若者グループや家族連れといったカタール人の姿を見かけますが、知り合いになりたいからといって見ず知らずの彼らに声を掛ける訳にもいきませんよね。

スークって?という方には、以前寄稿したこの記事を是非

カタール人が一日で長く時間を過ごす場所の一つは マジリス と呼ばれる場所です。

基本的には個人の敷地内に建てられた別棟の客間なので、親族以外の人が簡単に入ることはできません。各々のマジリスでは外国人もちらほらいますが、彼らはそのマジリスのオーナーかその親族の誰かの知人。友達とか仕事関係者といった立場の人たちなのです。

つまり誰かの紹介でなら入ることが可能というわけで、マジリスというのはある種の会員制サロンのような場所だと言えます。

私自身も普段よく通うマジリスは、その家の息子と知り合い、彼に招待される形で足を運ぶようになりましたし、新規に誰かのマジリスへ行くのは、必ずそのマジリスのメンバーに誘われた場合に限られます。では、常連化したマジリスに私が誰かを連れて行くことはできるのか?というと……

正直なところ……ありません(基本的には、ですが)

湾岸アラブの社会というのは人間関係が重要です。お互いに知らない者同士が顔を合わせる時は、両者にとっての共通の知り合いがそれぞれの信頼を担保することになります。つまりマジリスに私が知人を連れて行く場合、その人の信頼は私に責任が発生するわけです。信頼とは、私との間にある関係性に依存します。マジリスのメンバーに紹介する際に、私と知人の関係が薄いと信頼度も低くなりがち。関係が薄いというのは例えば「最近知り合ったばかり」とか「付き合いは長いけど、ネット上でしかやりとりをしたことがない」とかいったことです。

3日も連絡を怠れば「お前は友達じゃないのか?」となじられるような、濃い人間関係によって形成される社会。ネット上だけのやりとりなど「友達の範疇」にすら入りません。

先ほどは「基本的には(連れて行かない)」と言いましたが、困り事があって助けが必要な人を連れて行くことはあります。勿論その人となりをまず確かめてからではありますが。それでも「失敗したな」と連れて行ったことを後悔することもあります。外国人の私でもそういったことがあるので、カタール人なら一層のこと警戒するでしょう。身内の前で恥をかきかねないのですから。

そんなわけで知り合ったばかりの外国人をマジリスへ連れて行ってくれるようなカタール人は滅多にいません。職場などで何かきっかけが有れば、それを根気よく繋げて人間関係を作っていくしか、彼らの共同体を垣間見る手段はないのです。そのために大切なことは、マジリスや結婚式に誘われたら迷わずに足を運ぶとか、日本人の友だちと先約があってもそれを吹っ切るとか、そのくらいの覚悟が要ります

あと、複数の異なる部族のマジリスにやたらと顔を出すのは、まず信用を失くします。なにしろ八方美人が一番敬遠される社会だから。

しかし、その出会う「きっかけ」がそもそもないのが悩みなのですよね、えぇ。う〜ん、残念ながら、こればかりはどうこう出来る話ではないのです。敢えて言うとすれば、運が味方してくれることを願う、ですかねェ。

身も蓋もない話で締めくくってしまいましたが、もう一つ大事なことを忘れていました。

マジリスなどにいる給仕をないがしろにしないこと。

この話はまた次の機会にしましょうか。