それぞれの立場

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ドーハのアパートには必ず ”ナートゥール” と呼ばれる人がいます。所謂 ”管理人” という立場で、毎日アパート内外の清掃や、水回りや照明などの簡単な修理を自ら行ったり、住民からの苦情や要望をオーナーに伝えたりする役割を担っています。

ほぼ24時間対応するため、彼らは基本的にアパートの脇などに据えられた部屋に住み込みで働いています。

今住んでいるアパートにいるナートゥールはスリランカ人。実は彼で3人目。引っ越してきた当初は別の人がいたのですが、1ヶ月ほどでいなくなり、また別の人が来ましたが、これまた1ヶ月ほどで交代し、現在の彼になったわけですが、それから約3年が経ちました。その間に彼は一度も休むことはなく、以前勤めていた別のアパートでの仕事を含めると4年以上も国に帰っていない計算。

そんな彼が先月ようやくオーナーから了解を得られたと、半年ほどの予定で国へ帰って行きました。帰る直前に挨拶にきたので、ほんの少しですがお小遣いを。今頃は家族と一緒に過ごしているのでしょうか。

来たばかりの頃はアラビア語が殆ど通じず、細かい指示が必要な依頼の時は、同じアパートに住むインド人やパキスタン人に通訳を頼んだり。新築直後に入ってきたので、彼の住む離れの部屋はトイレも炊事場もない状態で、毎日隣接する別のアパートにいる管理人に頼んで、シャワーを借りていたようです。

毎日、早朝と夜にはアパートの住民の車を洗っていました。時には向かいのアパートの分まで引き受けていたのですが、彼はそれによって収入を補っていたのです。個々人で支払う額が違っていたので、どのくらいの収入があったのかは不明ですが、少なくても一回あたり10〜15リヤルは貰っていたはず。彼のように ”副業” をしているナートゥールは珍しくありません。そうでもしなければ、給料だけではとても暮らしていけない。自分一人ならなんとかなっても、国で待つ家族への仕送りを考えたらカツカツどころの話じゃないのです。

ガソリンを入れた時にお釣りが出ることがあります。それが2,3リヤルなら受け取らないことにしています。従業員のチップになるから。チップ文化というのはカタールでは基本的にはありませんが、レストランで気持よく食事ができた時は、そっと10リヤルほど置いていくといったことは、カタール人でも当たり前にやります。職場で何か買い出しを頼む際には、わざとお釣りが出るようにお金を渡して、戻ってきた給仕に残りをあげたりもします。

そういうちょっとした ”気遣い” は、彼らとの関係を円滑にするための工夫。「お金は天下の回りもの」という祖母の口癖を、カタールの空の下で私はいつも思い出すのです。

福嶋タケシ

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