ある日の金曜日

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食料品を扱わない店舗の週末営業が再開になって初めての金曜日。妻が散歩用に新しいウェアを買いたいと言うので、郊外に建つ巨大なモールへと足を運んでみました。

午後4時過ぎに到着したのですが、予想を裏切る客の入り。駐車場に停まった車の数も少なく、洗車係が暇を持て余している様子。今日は少し長居するつもりでもあったので、一週間前にうちのアパートの門番が洗ってくれたばかりですが、少しでも彼らの懐が暖かくなればと、お金をちょっとばかり大目に渡してから店内へと入ります。

どの店も客の姿はまばら。特にセールらしい雰囲気もなく。妻はNew Yorkerで欲しいものが安く出ていたのをゲットしたら満足したようで、私は特に買いたいものもないし、そのままCarreforeへ移動。そこでも買い予定だったものだけ買い物かごへ放り込んだら直ぐにチェックアウト。

予定よりも早く用事が済んでしまったけれど、30個入り卵パックをカートに入れたままの店内移動では、ウィンドウショッピングという気分でもありません。

かといってこのまま素直に帰るのももったいない気がして、妻に尋ねたら冷たいものが飲みたいと言うのでMocarabiaに立ち寄りドリンクをテイクアウト。私はスパニッシュカフェラテ、妻はローズカフェラテ。Entertainerのバウチャーがあったので半額になりました。

日が暮れる前にアパートにたどり着きたい。何故ならモール内の礼拝スペースは未だ閉鎖中ですし、市内のモスクも全てが再開しているわけではなく、また開場時間も通常より短縮されていて、タイミングよく礼拝の時間にモスクへ到着できるかも分からないからです。

幸いにも高速道路は比較的空いています。定速で流しても日没までには家に着きそう。いつもなら渋滞を避けるために迂回して信号の少ないルートを取るのですが、この日は居住エリアまで真っ直ぐに進んでみることにしました。

半分を過ぎてQatar Foudation付近に。信号待ちをしていると隣に並んだSUVから、やや苛立ったようなクラクションの音がします。何かと思い左を向くと、運転席に座った白い長髭を生やした初老の男性。いかにもベドウィンという姿と雰囲気。助手席にはその息子と思しき小学生くらいの子供が座っています。

窓を開けて話を聞きます。男性は「この交差点でUターンしたいんじゃが、どうすりゃ良いのじゃ?」と。残念ながらこの交差点は直進しか出来ません。そう答えたら男性は何故だ?!と不思議そうに聞き返します。「左に曲がるのもダメなのか?!」

このQatar Foundationの前を通る大通り、構内へ入るためのゲートに繋がる2箇所の交差点があるのですが、いずれも交差点とラウンドアバウトを組み合わせた構造になっていて、左右に曲がったりUターンしたりする場合は、交差点のはるか手前で一旦側道へ出てからラウンドアバウトに入る必要があります。

そんなことは、この初老のベドウィン親父さんには理解不能のようで、「とにかくこのまま進んで次の信号でUターンするしかないですよ」と言う私の言葉に納得のいかない顔をしながら、信号が青に変わったためにそのまま走り去りました。

このやり取りは終始アラビア語のいわゆる湾岸訛りでした。たまたま信号待ちで止まったら隣にいたのが私だったのでしょうけれど、マスクをしていたとはいえ、私がカタール人でないことは彼も気付いていたはずです。それでも当たり前のように自然と会話が出来た時は、やはり嬉しいものですね。

福嶋タケシ