去り行く人へ

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コロナ禍の最中に国家予算の緊急削減などを受けて、各省庁がリストラを敢行したのがこの4月だったか5月だったか。職場でもその話で持ちきりで「誰それが解雇になった」だのと噂が飛び交いました。

私の直属の上司であったスーダン人の班長も、その解雇リストに名前が載ってしまい、政府公務員ではなく省の直接雇用に切り替えるという案も出されたのですが、本人の高齢もあってそのまま退職が決まりました。

元々定年を過ぎていて、特別措置として雇用継続という状態だったので、いたしかたない部分も。

そんな班長がスーダンへ完全に引き揚げる日が近づきます。彼とは10年近い付き合い。仕事で訪れたタイでは、我が村にも一度顔を出してくれました。そんなこともあって妻が「家に食事に招待しましょうよ」と提案。昨日は班長と奥さんを招いてのささやかな送別会となりました。

3月以降はほとんど職場には顔を出さなかった班長は、現状の様子について矢継ぎ早に質問を飛ばしてきます。うちに来る前は新聞社にいた叩き上げの記者なので、話術はさすがに上手い。お互いに知っている裏情報まで交換しつつ、あっという間に時間が過ぎました。

もうカタールへ戻ってくることはないよ、そう彼は言い残し去って行きました。この国での暮らしはもう十分味わったのか、それとも後ろ髪を引かれる思いだったのか。これから余生を暮らす祖国には、様々なビジネスなども持っていて食うに困ることはなさそうですが、年頭に長女を失くしたり、大病を患い未だ完全復帰とはいかない長男のことや、なかなか心休まることはないのかもしれません。

落ち着いたらタイで会おうと約束し、彼の背中を見送ります。

その姿は いつか の私。

まだもう少しだけ先のことではありますが、自分もまた引き際というものを常に考えていかなければなりません。

福嶋タケシ